よう抜け抜けと来れたのう 17

それはちょうど<E>をスピンアウトして数か月が経とうとしていた頃である。

私もそれ以降は<E>のことも、あれだけ一緒にやってきたA女史とも連絡を取り合うこともなく、忘れようとしていた。

そんなある日、久しぶりにA女史から電話があり、話を聞いてみると、「おじいちゃんコンサルの<X氏>に騙された!<E>を売ろうと思う」といった内容だった。

なんでも私を追い出したあと、<X氏>は<E>を乗っ取ろうと着々と計画を進めていたという話を聞かされた。

そして、A女史と会う事になり、詳しく話を聞いてみると、<X氏>はハナから怪しいおっさんであり、私としても「だから言わんこっちゃない」だったが、なんと驚いたことに広告屋崩れの薄ら禿オジンも全く別のアプローチでA女史を騙したというのだ。

以前にも書いたように、A女史は芸能活動もしていたのだが、どうもその方面から攻めていったようである。

つまり、私が退いた後の<E>は、A女史の周りに魑魅魍魎がうようよ居た状態だったのである。

そんな話をA女史から直接聞いた直後に例の薄ら禿オジンが「相談員」としてあいさつに来たものだから、私としてもお会いしてニコニコ「やあ久しぶり」と言う訳にもいかなかった。

そして何回か空振り、つまり私が留守の時に来たようだが、ついに対面するときが来た。

あらかじめ分かっていたので、私はスマホの動画をスタンバイした。

そして、本人が何事も無いかのようにニヤニヤしながら挨拶をしてきたところ「よう抜け抜けと来れたのうワレ、何しに来たんや、お前!」と私より年齢でいうと十離れた年上のオッサンに言ってやった。

薄ら禿オジンは「えっ、私は何もしていませんよ」と自分ではなくA女史が悪い、と弁明していた。

私はスマホで録画したその様子をTikTokにアップした。

後でじっくりその時の音声を聴いてみると、不穏な空気を察知した女性スタッフが利用者さんに「2階上がりましょう」と言ってえらい気を遣わせてしまったようである。

<E>はその後「無事」という表現でよいのか<X氏>ではなく全く別の他人の手に渡り現在も営業を続けている。


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